近年、ペロブスカイト太陽電池が急速に太陽電池研究者の関心事になっております。
しかし、歴史の浅いペロブスカイト太陽電池は、まだまだ解明されていない部分も多く、試作セルの特性の測定に多くの方々が苦慮されております。
ここでは当社の太陽電池測定ソフトによるペロブスカイト太陽電池の測定方法をご紹介させていただきます。
注)ここで測定に使用したソフトは、トピックス欄の「太陽電池の測定(2)」、「分光感度3D測定」でご紹介 しているソフトです。
ペロブスカイト太陽電池の測定方法アドバイス
ペロブスカイト太陽電池の測定/評価で、まず最初に悩まされるのはI-V測定でのヒステリシスへの対処と思います。
一般的には、ヒステリシスを伴ったままで測定したI-V測定では、電流値は常に大き目の値を示します。ヒステリシスの無いI-V特性は定常状態の特性ですが、ヒステリシスのある場合は、過渡状態の特性ですから、時間的要素により変化します。下記の例では、2箇所のヒステリシスが確認されます。
ここでの測定方向は、ISCからVOC方向(青色)に測定した後、VOCからISC方向(緑色)に測定しています。
ペロブスカイト太陽電池の特性を正確に評価するためには、I-V測定でのヒステリシスは最小限に留める必要があります。
ここで、ペロブスカイト太陽電池のヒステリシスを最小にするための測定方法の一例を示します。
ヒステリシスの発生しているI-V測定中の電流波形を測定します。この測定では、当社ソフト品番W32-B2900SOL4を使用します。
下図の電流波形から、ヒステリシス①の発生原因は、電流が安定状態になる前の過渡状態(減衰途中)の値を測定したために発生したことが解ります。
各電圧ステップ毎に、電流が安定状態になるまで待ってから電流を測定する必要があります。
電圧ステップ時間幅を大きくして、電流が安定状態になる時間を確認します。
この時間幅は、セル毎に大きく異なりますので、電流の減衰カーブから推測します。場合によっては、数秒から十数秒になる場合があります。
時間幅を大きくしても、ヒステリシスが無くならないことが電流波形から推測される場合は、ヒステリシスが最小となる時間幅を確認します。
ここで確認した電圧ステップ時間幅を、測定遅延時間に設定してI-V測定を行うことになります。
次に下図のヒステリシス②は、I-V測定開始時の、光電流の応答遅れにより発生しています。
ペロブスカイト太陽電池では、光を照射した後、光電流が安定になるまでに時間を要する場合があり、
これが測定開始直後のヒステリシスの原因になります。
このヒステリシスを回避するためには、ホールド時間を長くします。
ホールド時間とは、セルに光照射し、セル両端を測定開始電圧に保し、光電流が安定状態になるまでの待ち時間です。ホールド時間で光電流が安定した後、I-V測定を開始します。
この時間は、数秒から数十秒になる場合があります。
下記にペロブスカイト太陽電池の時間調整前と後のI-V測定比較例を示します。
この例では、ホールド時間測定遅延時間を調整し、ヒステリシスを最小限におさえたI-V測定に対し、
未調整のI-V測定の電流値は大き目に測定されています。
しかし、ヒステリシスを最小に抑えた測定条件では測定時間が大幅に延び、数分以上に及ぶ場合があり、この間のセルの温度上昇や光照射などによる特性変化を考慮する必要があります。
ペロブスカイト太陽電池は湿度や空気に影響を受けやすいとされる太陽電池です。
繰返し測定によりI-V特性の変化を確認します。
また、測定中の長時間の光照射の影響や、光照射によるセル表面の温度上昇などによる影響も確認しておく必要があります。
光量をDARKから1-SUNまで変化させ、それぞれの光量のI-V特性を測定します。
そして、VOC,ISC,FF,変換効率などの各パラメータの光量依存性を確認します。
ペロブスカイト太陽電池は、IPCE(EQE)測定でも、光電流の応答遅れが発生するため、各波長の電流測定では、安定状態の電流を測定する必要があります。DC法では、各波長ごとに時間を隔てて複数回の電流測定を行います。 測定毎に電流値は増加しますが、電流値の増加が止まったところの電流値でIPCEを算出します。
ペロブスカイト太陽電池の測定方法アドバイス
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